Rebecka Coutaz氏がゲーム業界を牽引する存在になるまでの道のり
DICEのバイスプレジデント兼ゼネラルマネージャーの道のり、洞察、ビジョンを探る。
女性歴史月間にちなんで、スタジオを牽引するリーダーたちの目覚ましい貢献を称える連載を始めます。初回となる今回は、DICEのバイスプレジデント兼ゼネラルマネージャーであるRebecka Coutaz氏にスポットライトを当て、彼女のゲーム業界におけるリーダーになるまでの道のりを紹介します。
20年以上にわたるゲーム業界でのキャリアを持つRebecka Coutaz氏は、女性がインタラクティブ・エンターテインメントの最前線にもたらす意欲、創造性、ビジョンを体現しています。
Rebecka Coutaz氏について
Coutaz氏のElectronic Artsでのキャリアは2021年11月に始まり、それは「バトルフィールド 2042」のリリース数週間後の就任でした。DICEのバイスプレジデント兼ゼネラルマネージャーに就任したCoutaz氏は、社内で成長と進化の旅に乗り出しました。自身の軌跡を振り返りながら、ゲーム業界とフランチャイズ全体の変化を反映するように、彼女自身の立場が時間とともにどのように変化してきたかを語ってくれました。
Q: EAに入社した当初の役割はどのようなものでしたか? そして、その役割はどのように進化していきましたか?
DICEのバイスプレジデント兼ゼネラルマネージャーとして就任して以来、その役割は当然、大きく進化してきました。例えば「バトルフィールド 2042」と「バトルフィールド」シリーズには大きな変更が加わり、日々進化を続けています。
今思えば、これらの作品のリリース時には本当にやるべきことが多くありました。なんせ、最初のシーズンのリリース日を数ヶ月遅らせるという大きな決断さえも下しましたからね。シーズン1のリリースを迎えたときは、まるでNASAのコントロールセンターにいるような気分でした。ボタンひとつを押したら、新コンテンツが公開され、目の前のスクリーンにすべてのプレイヤーたちが映し出されたのです。私たちは、その瞬間を迎えるために一生懸命働きました。だから、その瞬間がEAで初めて記憶に残る節目だったと思います。
そして二つ目の節目は、現実世界でDICEタウンホールを開催したときです。今では、4ヶ月ごとにDICEタウンホールは開催されています。このようなチーム全体による集会やミーティングから得られるエネルギーは、本当に素晴らしいものだと思います。
Q: ゲーム開発に携わったことはありますか?
もちろん。私は1998年からずっとフルタイムでゲームを作ってきました。しかし、それ以前にも1995年からローカライズのテストを行っていました。つまり社会人になってからは、ずっとゲームの開発に携わってきたのです。
そのため、業界内ではベテランとして知られていますね。私はキャリアを通じて、さまざまな上場企業で働き、プレイヤーたちのためにゲームと体験を生み出してきました。
元々、エンターテインメントやゲームが大好きでしたが、ゲーム業界に入ったきっかけとなったのは、人々の情熱に動かされたからです。その情熱に触れたとき、私は一生この仕事をすることを決心しました。これほど情熱的で、心とお腹で働き、作品をプレイヤーと分かち合うことに献身的な人たちと一緒に仕事を続けたいと思いました。
ゲーム業界における女性リーダーシップの推進
Coutaz氏は個々の実績に加えて、チーム内に協力的かつインクルーシブな環境を育むことの重要性を強調しています。ダイバーシティの価値を認識する彼女は、開発チームが多様なプレイヤー層を反映することの必要性を唱えます。Coutaz氏はDICE内におけるダイバーシティの推進に重要な役割を果たしており、その結果、スタジオのリーダーシップチームには多くの女性たちが加わり、この実績は、多くの女性をインスパイアして、この業界に惹きつけ続けています。
Q: Electronic Artsの未来を形作る上で、特にDICEにおける女性の役割をどのように認識していますか?
現在、私たちは老若男女、さまざまな国籍やバックグラウンドを持つあらゆる人々のためにゲームを作っています。だから、私にとって非常に重要なのは、最高の作品と最高のプレイヤー体験を作ることができるよう、プレイするさまざまなプレイヤーたちを反映する人材がいるチームを作ることです。
多様性に富んだチームの強みは、創造性や革新性という点で、異なる視点やインプットがあることだと思います。だからこそ、多様性に富んだチームを管理する優れたマネジャーやリーダーを育成し続けることは非常に重要なのです。そのようなチームから生まれる多様な思考には、守るべき素晴らしい価値があります。
Q: どのようにして、チームメンバーのために、協力的かつインクルーシブな環境を育んでいますか?
私は、1993年にスタジオが設立されて以来、DICE初となる女性ゼネラル・マネージャーです。多様性に富んだチームを惹きつけるためには、このような、たったひとつの変化が大事な場合があります。女性である私がゼネラルマネージャーであることも含め、DICEスタジオのリーダーシップチームを誇りに思っています。私だけでなく、チーフ・オブ・スタッフ、クリエイティブのスタジオヘッド、そして製品開発ディレクターも女性で、スタジオのリーダーシップ・チームの多くも女性であるため、多くの女性を惹きつけています。
とにかく、何よりも大事なのは、役割、責任、期待を明確にすることです。安全な環境であれば、何をすればいいのかが分からないときでも「どうすればいいのですか?」「遂行するには、これが必要です」などといったことが言えます。
ミスがあってもいいのです。なぜなら、私たちはクリエイターだから。イノベーションを推進し、創造性を発揮するには、大きなリスクが伴うため、ミスは許されるべきなのです。何事も完璧にはいきません。時には失敗して、振り出しに戻り、最初からやり直すことさえもあります。
変化する環境への対応
今後の展望として、Coutaz氏は、変化する環境とプレイヤーの期待に応え、進化し続けるゲーム業界を思い描いています。彼女は、テクノロジーがゲーム制作の基盤として非常に重要な役割を担っており、より没入感の高いゲーム体験を実現するためには変革的なテクノロジーが必要であることを強調します。彼女はテクノロジーの進歩が、アクセシビ��ティとコミュニティ・エンゲージメントの向上と相まって、ゲーム業界を大きく変化させ、業界を民主化し、世界中から多様な才能を育んできたと語ります。
Q: インタラクティブ・エンターテインメントの世界は、この数年でどのように変化しましたか?
テクノロジー、ビジネスモデル、プレイヤー、プラットフォーム、私たちのプレイ方法、エンターテインメントやゲームの消費方法、オンライン能力の成長など…どこから語っていいか分からないぐらいです。
テクノロジーは、私たちの作品作りの土台として重要なだけでなく、プレイヤー自身がどのようにゲームを通じて創作し、見て、つながり、プレイするかにも大きく関わっています。そしてもちろん、かつてはシングルプレイヤー専用だったビデオゲームというジャンルが、今では香港にいてもデトロイトにいても、世界中でプレイできるようになったこと、そしてクロスプラットフォームになったことは、私にとっては非常に大きな変化です。
また、この技術によって、より没入感のある体験を作り出すことができます。私がキャリアをスタートした当時のゲームは、大抵5~6時間で終わるものでした。しかし、今では多かれ少なかれ、ゲームを無限に続くように作ることができます。
また、私にとって、もうひとつ重要なことは、現在プレイヤーの皆様とリアルタイムで連絡を取り合っていることです。私がキャリアをスタートした当時は、プレイヤーがバグに遭遇するとホットラインに電話をかけていました。そのホットラインが開発者に連絡を取ることで、私たちは解決策を見つけようとしました。しかし今では、プレイヤーの皆様とリアルタイムで連絡を取り合えるため、プレイヤーの好みを把握し、質問することもできます。
そもそも、私がキャリアをスタートした頃は、大学でビデオゲームの開発を学ぶことはできませんでした。そのため、私たちは独学でゲームの作り方を学ぶしかなかったのです。逆に今では、ゲームプレイのプログラミング、ゲームデザイン、コミュニティ管理などについて学ぶことができます。それによって、私が30年近く前にキャリアをスタートさせた頃とは比べものにならないほどの才能が世界中から集まってきています。
そしてもちろん、現在は昔より優れたゲーム体験を生み出すためのツールが数多くあります。そういったツールを使うことで、民主化が可能になったと思います。今はゲームをいじったり、インディーズで作品をリリースしたり、FortniteやRobloxなどの既存のプラットフォームで作品を公開できるため、この業界に参入するのは昔に比べて簡単になったことでしょう。それでも、ゲーム作りは今でも本当に難しいのですが、かつての障壁が無くなったという点では楽になったと思います。
よりインクルーシブな業界に向けて
Coutaz氏は、業界で名を上げようとしている女性たちに、シンプルで力強いメッセージを贈ります。「会議の際には、声を上げましょう。あなたの意見、あなたの発言は、他の者に劣ることはありません」彼女は、もっと多くの女性たちがゲームの専門家となり、ゲームの未来を形作る一員になることを推奨しています。
Rebecka Coutaz氏のゲーム界におけるリーダーシップを称えることで、私たちは彼女の個人的な功績を称えるだけでなく、インタラクティブ・エンターテインメントの世界を形作る女性たちの幅広い貢献そのものを称えます。Coutaz氏は次世代の女性リーダーにインスピレーションを与えるゲーム界の希望の光です。